橋下徹:ウクライナに寄り添うふりをする政治評論家
結果的にロシアを利する言動
こちらで書いている一連の記事では、親露と利露のプロパガンダを検証するのは目的だが、取り上げる人物の中、橋下徹だけが「親露」の要素が見当たらず、純粋な利露のプロパガンダを流しているように見える。つまり、ロシアに利益を与えたいという意図は見えてこないが、橋下が広めている主張は結果的にロシアを利するということだ。
もちろん、橋下の裏の事情も内心も筆者にはわからない。彼には、ロシア勢力との繋がりは全くない、あるいは彼は心の中でロシアが有利になってほしいと全く思っていない、ということを断言はできない。つまり、彼は「利露」ではなく本物の「親露」である可能性は全くないと断言できる情報を、筆者は持っていないが少なくとも、表に出ている彼の発信の内容から、彼はロシアが有利になってほしいという風には見えない。
それでは、彼の代表的な主張を検証してみよう。
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「男性の出国禁止は人権侵害」
2022年にロシアによるウクライナ全面侵略が始まったころは、橋下は「ウクライナ政府は男性の出国を禁止しているのは人権侵害だ」、「戦う一択ではない」と「戦争から逃げればいい」という主張を繰り返していた。この主張はすべて間違っている
まずは、ウクライナ政府は男性の出国禁止にするのは人権侵害ではない。移動の自由は当然の権利だが、侵略戦争という国家存亡の危機に遭った時、国家は国防の義務を持っている国民に対して、ある程度の強制的な措置を実施するのはやむを得ない。なぜなら、国家が滅亡すれば、すべての国民が命の危機に遭うからだ。
だから、軍に入りたくない、戦いたくない人に国家がそれを命令するのは、非常に痛ましい、悲劇的な状況ではあるが、究極な状態において、国家はより多くの国民を救うために冷酷な政策を取らざるを得ない場合がある。もちろん、他国を攻め込むために、国家は自国民に戦うことを強いるのは論外だが、攻め込まれて、やむなく応戦している国家の場合がこのような強制は妥当である。
ちなみに、筆者自身は、男性の出国禁止の政策は見直すべきだと思っている。この戦争は長期化しており、当分終結する見込みはない。長期戦になる中で、戦争しながら経済活動と軍の支援活動を行う必要がある。現在、ウクライナ人男性の多くが出国できないため、経済活動や軍を支援する民間ボランティア活動は非常に制限されている。男性は自由に出入国をできれば、物流の面で大きなメリットがある。
ただでさえウクライナの経済はロシアの攻撃で破壊された状態だから、それを男性の移動制限によって悪化させるのは得策ではない。もちろん、出国制限を撤廃すれば、兵役や動員逃れを狙う人は出国を試みるだろうが、メリットとデミリットを比較すると、兵員が足りなくなることより経済が更に疲弊する恐れのほうが高いので、総合的に判断すると、男性の出国禁止を撤廃、あるいは少なくとも緩和すべきであろう。
しかし、これは非常に敏感な問題だから、この問題について当事者以外は口に出すべきではない。当事者でもなく、ウクライナ支持者でさえない橋下はこの問題について口を出す資格はない。
「戦う一択ではない」
また、橋下は「戦う一択ではない」という発言を繰り返して、ウクライナはロシアに譲歩すれば、この戦争を戦い以外の手段で終結させることができると主張していた。しかし、この主張も完全に間違っている。例えば、両国は係争地を巡って戦争している場合は、確かに戦い以外の方法でも問題を解決する可能性があるかもしれない。もしくは、片方の国は、相手から何らかの譲歩を求めている場合、譲歩さえすれば戦争を終わらせることができる状況で、「戦う一択ではない」という理屈が成り立つかもしれない。
しかし、ロシアによるウクライナ侵略は、全く性質の異なる戦争である。ロシアはウクライナから全面降伏を求め、ウクライナ国土の併合を目指している。ウクライナは戦いをやめれば、ウクライナの全土はロシア軍に占領され、ウクライナは存在しなくなる。だから、戦いたくなくても、戦わざるを得ない。
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